企業知財部員のための特許法勉強ノート

知財関係で働いています。勉強している特許法についてまとめたノートを公開していきます。 一緒に特許法を勉強しましょう!

特許を受けることができる者

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1発目は特許を取得するうえで重要な特許を受けることができるのはどのような場合かを勉強しましょう!

<ポイント>
 ・特許を受けることが出来る者は誰か。特に職務発明の場合は?
 ・同一発明について2以上の出願が競合した場合に,特許を受けることができる者は誰か? 等

目次
1.発明者
(1)発明者の権利
(2)特許を受ける権利
(3)共同発明者
 (A)共同発明者の権利
 (B)共同発明者かどうかの判断 -実質的協力か単なる協力か 判断基準-
 (C)共同研究契約等
2.承継人

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 1.発明者 -発明者の権利 共同発明の諸問題-
(1)発明者の権利
・特許を受ける権利を有する者:発明者(§29-1)
・未成年も発明者となり得る:発明は事実行為であり法律行為でない故 注1)
▲いわゆる冒認出願は許されない(§49-7(6では無い))
 ⇒ そのような者に誤って特許が付与された場合:無効理由(§123-1(6))
   真の発明者に無効審判請求されると無効になる(§123-2)
注1)満5年8月に達しない者に考案能力が無いということは出来ないとの審決例あり@実案

(2)特許を受ける権利
・発明者は発明することにより特許を受ける権利を取得する。権利の性質は次の通り
 ①公権説:特許を受けることを請求する権利であるとする説
 ②私権説:発明の支配を目的とする支配権であるとする説
 ③複合説:両者の結合
  ⇒ いずれも譲渡性がある財産権であるとする点が一致(結局どれ?)

・発明者の名誉権
 特許を受ける権利は名誉権を伴うが,特許を受ける権利の一部を形成するものでない
 ∵特許を受ける権利は移転出来ること(§33-1)から人格権というより財産権である

・発明者の誤記
 発明者の記載の誤り自体は,出願の拒絶理由又は特許の無効理由にはならない。
⇒ 冒認出願又はこの冒認出願に基づく特許についてのみ拒絶理由又は特許無効理由となる
 ∵出願の拒絶理由及び特許の無効理由を特定し,それ以外を理由とすべきでないとの趣旨により立法されているから(制限列挙主義)

(3)共同発明者
(A)共同発明者の権利
 ▲共同発明につき一部の発明者のみが出願して特許を受ける事は出来ない(§38,§49-2)
 ∵特許を受ける権利は共同発明者全員にあるため

・集団発明・法人発明
 企業又は国立の研究所等から生まれるいわゆる集団発明にあっては,その集団の属する組織体自体が発明をしたと考えるべきであるとの説がある
⇒ 特許庁の実務,判決共に否定的。特許を受ける権利を有するのは自然人
 ∵組織体には多数の単なる協力者がいるのが普通であるから,一般的に組織体自体を発明者とする考え方は,実状に反し採用出来ない。発明者自身を特定できない場合も同様

(B)共同発明者かどうかの判断 -実質的協力か単なる協力か 判断基準-
・共同発明者:単なる協力でなく,実質的に協力し,発明を成立させた者
・関係者が多数いる場合は,単なる協力者か実質的な協力者かの判断は容易でない
 ⇒ 実務上 注2)発明者の表示の補正(追加・削除・変更)を一定の条件の下で認めている

①判断基準
発明は技術的思想の創作
⇒ ▲創作自体に関係しない者(単なる管理者・補助者,後援者等)は共同発明者でない

ⓐ単なる管理者:部下の研究者に対して一般的管理をした者
例えば具体的着想を示さず単に通常のテーマを与えた/発明の過程で単に一般的な助言・指導を与えた者
ⓑ単なる補助者:研究者の指示に従い,担にデータを纏めた者又は実験を行った者 注3)
ⓒ単なる後援者・委託者:
発明者に資金を提供したり,設備利用の便宜を与えることにより,発明の完成を援助した者又は委託した者

注2)特許庁の実務
発明者の表示を補正しようとするときは,出願の係属中に以下の書面提出を要する
 ①正しい願書
 ②譲渡証
 ③前後の発明者相互の宣誓書
 ④補正の理由を詳細に記載した書面(理由書)
 ⑤発明に至るまでの経過を記載した書面
注3)判決 東京地判昭54.4.16(穀物の処理装置事件)は,「発明者の指示に基づき本件発明に係る装置の作成等を担当したに過ぎない者は,発明者では無い」旨を判示する。

(C)共同研究契約等
 2以上の企業の共同研究又は産学共同の研究及び国が関与する委託研究や受託研究
 ⇒ 研究の結果生じた発明等の成果につき,予め契約で明確な取決めをしておくことが必要
   ①共同研究における発明者の決定の方法(手続,期間等),
   ②特許を受ける権利又は特許権の帰属(共同研究成果を必ずしも共有とすべき必要は無い)
   ③出願手続,審判手続等の遂行者と費用負担者,
   ④特許発明の実施や実施権の許与,
   ⑤特許発明の実施によって得た利益の分配等があるとされている

2.承継人
・承継(移転)
 ・特定承継(職務発明による承継,他社よりの承継等)と一般承継(相続,合併等)
 ・特許を受ける権利は,契約又は相続その他の一般承継により移転可能(§33-1)
  ⇒ 出願前後何れも可
 ・特許を受ける権利の一部のみの移転も可能
  ⇒ ▲共有に係るとき:他の共有者の同意を得なければその持分譲渡出来ない(§33-3)

・出願前の承継
 特許出願前に特許を受ける権利を承継したとき
⇒ ▲その承継人が特許出願をしなければ第三者に対抗することが出来ない(§34-1)

・出願後の承継
特許出願後に特許をうける権利を承継したとき
 ⇒ その承継人は,特許出願人の名義を自己の名義に変更する届出を特許庁長官にしなければならない(§34-4,5及び特施則§12)
 ⇒ 相続その他の一般承継の場合,承継の旨を遅滞なく届出を要する(§34-5(訓示規定))
その他の通常の承継の場合,届け出なければその効力を生じない(§34-4(効力規定))
 ⇒ 同日の2以上の届出については協議で承継人を定める(同条2・3及び6・7参照)。

・承継の公表
出願公開後に特許を受ける権利の承継があった場合は,その旨が公表される(§193-2(2))

・承継と発明者名
発明者は,特許を受ける権利の全部を移転したとしても(出願の前後を問わない),その氏名は,願書,特許公報及び特許証に発明者として掲記される。


以上でーす!

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