企業知財部員のための特許法勉強ノート

知財関係で働いています。勉強している特許法についてまとめたノートを公開していきます。 一緒に特許法を勉強しましょう!

従業者発明について特許を受けることができる者1

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今回は職務発明について勉強しましょう!法改正されましたが現行法を勉強します。長いので二回に分けます。

目次
1 従業者発明について特許を受けることができる者
職務発明を中心として-
(1)概説-問題の重要性 産業政策的配慮の必要性-
(2)従業者発明の種類
(3)職務発明
 (A)使用者等の業務範囲に属する発明
  (ⅰ)使用者等
  (ⅱ)業務範囲
 (B)発明をするに至った行為が従業者等の職務に属する発明
  (ⅰ)職務
  (ⅱ)従業者等
  (ⅲ)発明をするに至った行為
  (ⅳ)職務内容(ポスト)
  (ⅴ)現在又は過去の職務
  (ⅵ)退職後の発明

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1 従業者発明について特許を受けることができる者
(1)概説-問題の重要性 産業政策的配慮の必要性-
・今日における発明の大部分は,企業における従業者の発明 注1)
 ⇒ 従業者の発明を企業との関係でどう保護するかは国の産業政策の問題としても極めて重要
・従業者発明の問題を労使間の自由な取決めに任せると力関係に左右され不合理に決着する恐れ
 ⇒ 産業政策上適当と認められる基本的方針を樹立し,法制化することが妥当 注2)

注1)H9実績:個人17,138,法人373,375,官庁1,059(特許庁年報(平成10年度版))
注2)従業者発明の法制
・ドイツは特許法によらず,従業者発明について別の法律あり
・アメリカは判例法に委ねるが,公務員の発明についてのみ法律を設けている。

(2)従業者発明の種類:使用者の義務との関係や従業者の職務との関係より次のように分類
  ①自由発明 使用者の義務範囲に属しない発明をいう。
  ②業務発明 使用者の義務範囲に属する発明であって,次の③を除いたものをいう
  ③職務発明 **特許法は,職務発明を中心として従業者の権利関係を規定している**

(3)職務発明
「その性質上,当該使用者の業務範囲に属し,かつ,その発明をするに至った行為が,その使用者等における従業者等の現在又は過去の職務に属する発明」(§35-1)
(A)使用者等の業務範囲に属する発明
  (ⅰ)使用者等
特許法上の使用者等:他人を雇用する自然人,法人,国又は地方公共団体
・判決 大阪地判昭47.3.31(耐圧ホース事件)
「法人が個人会社であっても,その代表者と会社とはそれぞれ法律上別個の人格である」
  (ⅱ)業務範囲
・定款説:定款にある目的の範囲。具体的な事業内容+「その他,これに付帯する事業」
     ⇒ 「…付帯する事業」をどの程度に解するのか?(広く解するのが通説)
・反対説:法人と従業員の関係を定めることを予定したものでない。縛られるべきでない

(B)発明をするに至った行為が従業者等の職務に属する発明
  (ⅰ)職務:従業者等が使用者等の要求に応じて使用者等の業務の一部を遂行する責務
  (ⅱ)従業者等:従業者の他,法人役員,国家/地方公務員等*嘱託,臨時雇,出向社員含む
  (ⅲ)発明をするに至った行為
・発明を意図したかどうかは関係なく,職務遂行の結果として生じた発明は職務発明である
・発明は思想であり,ここでいう「行為」とは思索的行為又は精神的活動を意味するが,付随する行為として必要である限り,いわゆる肉体的活動をも含むとすべき
・これらの行為は,一般的には勤務時間中になされれば足りると解すべきであろうが
大阪地判昭54.5.18(連続混錬機事件)は「一般に発明の職務発明性を是認するためには,思索等の行為が全て勤務時間中になされることは必要でない」旨を判示

  (ⅳ)職務内容(ポスト)
・担当職務内容ないしポストからみて,発明を試み発明をすることが当然に予定され又は期待される場合には,発明をするに至った行為が職務に属すると解することができる。
・大学教授・助教授等の大学職員によってなされる発明(いわゆる大学発明)が,職務発明であるかどうかについても,上記の見地から判断すべき
    ●H16以降,国立大学の独立法人化に伴い,仕組みが変わっているところがある●
⇒ わが国の大学等には,研究資源が多く集中しているが成果が産業界で充分活用されてきたとは言い難い。職務発明制度の整備やTLO等を通じた技術移転が推進されている。

  (ⅴ)現在又は過去の職務
   ・従業者等の職務:現在のもの+過去のもの
⇒ 例:現在有機化学,過去に無機化学の研究をした研究者がした無機化学に関する発明
  (ⅵ)退職後の発明
・§35に明文規定は無いが文理解釈上,現在も従業者等として雇用関係がある場合のみ対象
⇒ 雇用関係が終了した場合における過去の職務を言わないと解される●通説●。
・発明完成直前に退職したとき(実質上,退職前に発明を完成している場合を除く,など特段の事情がある場合には,§35に抵触しない範囲内で合理的な契約の締結が必要

以上です!
次回に続きます!

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