企業知財部員のための特許法勉強ノート

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発明の特許要件 先願②

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今日も先願です!

目次
1.先願者
(6)先後願関係の有無判断基準-発明の同一性の問題-
 (A)本来の先願(§39)
  (ⅰ)§39に係る判断について
  (a)§39の判断の対象
(b)請求項に係る発明が同一か否かの判断の手法
(c)§39の規定に基づく拒絶理由通知における留意事項
  (ⅱ)従来の判断基準
(a)基本的前提
(b)原則

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(6)先後願関係の有無判断基準-発明の同一性の問題-
(A)本来の先願(§39)
   二つの発明に先後願の関係があるか ⇒ 発明の同一性があるかどうか
<発明の同一性の問題>
    新規性(§29)・分割出願の適法性(§44)・拡大先願(§29の2)・技術的範囲(§70)を判断する場合にも生じる。
      ⇒対象は異なる。
    ・先後願及び同日出願(分割出願を含む)関係における発明の同一性
      ⇒ 請求の範囲に記載された発明同士の同一性
    ・発明の新規性における発明の同一性
      ⇒ 請求の範囲に記載された発明と、特許出願前の特許文献もしくは一般文献に記載された発明との同一性
・拡大された先願関係における発明の同一性
      ⇒ 請求の範囲に記載された発明と、先願に係る特許出願の明細書又は図面中に記載された発明との同一性
(ⅰ)§39に係る判断について
 (a)§39の判断の対象 ⇒ 「請求項に係る発明」
技術的思想の同一性を判断。
 (b)請求項に係る発明が同一か否かの判断の手法
  (イ)請求項に係る発明どうしの対比
     発明を特定するための事項(請求項に記載)の一致点及び相違点を認定
  (ロ)出願日が異なる場合における請求項に係る発明同士が同一か否かの判断手法
     ①発明特定事項に相違点がない場合、両者は同一
     ②相違点があっても、実質同一の場合
      後願発明の発明特定事項が、先願発明に周知技術・慣用技術の、削除、転換等を施したものに相当し、新たな効果を奏しない場合。
      下位概念である先願発明を上位概念として表現した場合
      相違点が単なるカテゴリー表現上の差異の場合
     ③先願発明の請求項が、発明特定事項に関して選択肢を有する場合、選択肢中のいずれか一のみを発明特定事項と仮定し後願発明を対比して、相違点がない場合。
     (留意事項)①~③は先願発明が実施可能要件を満たすことが必要。
  (ハ)後願発明の発明特定事項が二以上の選択肢を有する場合
     選択肢中のいずれか一のみを発明特定事項と仮定し先願発明と対比。
  (ニ)同日出願された二つの出願が同一か否かの判断手法
   ①発明Aを先願とし発明Bを後願とした場合、その逆の場合、共に両者同一とされる場合は、同一発明。
   ②発明Aを先願とし発明Bを後願とした場合に同一だが、逆の場合は同一とされない場合は、同一発明に該当しない。
  (ホ)製法限定等を含む請求項に関する取扱い
   ①本願の請求項の記載の一部又は全部が、ある生産物をその物の製造方法により特定しようとするもの(プロダクトバイプロセスクレーム)の場合、原則、当該記載はその生産物自体であると解する。
その生産物自体が構造的にどのようなものか決定することが極めて困難であることに鑑み、審査官が、両者が同じ物であると一応の合理的な疑いを抱いた場合には、先願発明と同一である旨の拒絶理由を通知し、出願人の反論を待つ。反論により、審査官の心象を真偽不明となる程度に否定することができた場合には、拒絶理由が解消される。変わらなければ§39により拒絶査定。
    先願発明がプロダクトバイプロセスクレームの場合は適用しないが、同日出願の二発明については適用する。
      一応の合理的な疑いを抱くべき場合とは、
    出発物質が類似で同一の製造工程により製造された物の先願発明を発見した場合。
    出発物質が同一で類似の製造工程により製造された物の先願発明を発見した場合。
出願後に請求項に係る発明の物と同一と認められる物の構造が判明し、それが先願発明であることが発見された場合。
    本願の明細書もしくは図面に実施の形態として記載されたものと同一又は類似の先願発明が発見された場合。
   ②作用、機能、性質又は特性により物を特定しようとする記載を含む請求項であって、下記,に該当する場合は①と同様。
    当該作用等が、標準的なもの、当該技術分野において当業者に慣用されているもの、又は慣用されていないにしても当業者に理解できるもののいずれにも該当しない場合。
    標準的な又は当業者に慣用されている作用等が複数組み合わされた結果、全体として当該作用等が、標準的なものでも、また当該技術分野において当業者に慣用されているものでもないものとなる場合。
      一応の合理的な疑いを抱くべき場合とは、
    請求項にかかる発明の作用等が他の定義又は試験・測定方法によるものに換算可能であって、その換算結果から見て同一と認められる先願発明のものが発見された場合。
    出願後に請求項にかかる発明の物と同一と認められる物の構造が判明し、それが先願発明であることが発見された場合。
後願の明細書若しくは図面に実施の形態として記載されたものと同一又は類似の先願発明が発見された場合
    先願発明と後願発明との間で、作用等により表現された発明特定事項以外の発明特定事項が共通しており、当該作用等により表現された発明特定事項の有する課題又は有利な効果と同一の課題又は効果を先願発明が有している場合。
 (c)§39の規定に基づく拒絶理由通知における留意事項
 ・拒絶理由の対象となる請求項を特定する。
 ・§39-1~4に該当すると判断した理由を具体的に指摘する。
 ・出願人の反論で審査官の心証を真偽不明になる程度まで否定できた場合に拒絶理由は解消。できなければ、拒絶査定。
(ⅱ)従来の判断基準
 (a)基本的前提
   ①発明の同一性判断の対象はクレームに記載されたものに限られる。
   ②記載の異同ではなく、クレームに存在する思想の実体に着目して判断。
   ③重複特許排除の原則は、部分的に一致する場合においても適用すべき。
 (b)原則
  (イ)実質的同一
     ・クレームに記載された発明思想が、実質的に同一であることが明らかな場合。
     ・非本質的事項に差異があるに過ぎない場合。
      例:
      ①単なる表現の相違
      ②単なる効果の認識又は目的の相違
      ③単なる構成の相違
      ④単なる用途の相違又は単なる用途限定の有無 ※具体的事例は割愛
  (ロ)内在的統一-実質的同一の変形-
     発明の詳細な説明及び図面中に記載された発明の実施例を通じて、特許請求の範囲に存在することが間接的ながら明らかに認められる思想同士の同一。
     典型的なケース:
     「自明でなく、しかも無意味でもない(いわゆる発明的)条件を付した部分が互いに異なる2発明であって、それぞれの発明の明細書中に比較される相手の発明が実施例として記載されている場合」
  (ハ)部分的同一-部分的重複特許排除の原則-
     全部同一の場合と同様に、§39によって拒絶すべき。
     部分的重複特許排除反対論
      ⇒ §39の同一発明とは全面的に同一の発明のみを意味する。
     反対論とする場合の弊害:狭い範囲の発明の先願者は、特許権の消滅後、自己の発明を実施するときに広い範囲の発明の後願者の特許権を侵害することになる。など。
  (ニ)実施例同一-部分的同一の変形-
     2発明に共通する実施例がそれぞれの明細書及び図面に存在するとき
     ⇒ 実施例同一であるがゆえに同一発明であると解す。

以上でーす!

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