企業知財部員のための特許法勉強ノート

知財関係で働いています。勉強している特許法についてまとめたノートを公開していきます。 一緒に特許法を勉強しましょう!

発明の特許要件 産業上の利用可能性

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今回は権利化に必要な発明の特許要件の内、産業上の利用可能性を勉強しましょう!

目次
1産業上の利用可能性
 (A)産業とは
 (B)利用とは
 (C)医療業の産業性 -医療的発明は?-
 (D)産業上の利用性に関する問題 

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 1産業上の利用可能性
特許を受けるためには、産業上利用することができるものでなければならない。(§29 柱書)
 ∵特許法の目的が産業の発達にあるため。

(A)産業とは
 ・特許法に定義はない。
 ・産業に含むもの。
    工業/農業/林業/水産業/牧畜業等(生産業)、運輸業/交通業(補助産業的なもの)
 ・産業に含まないもの。⇒ 例外がないわけではない。
  保険業/金融業/医療業(サービス業)
    ※サービス業
 洗濯業、広告業のような業は産業の一つと解する。
 ∵洗濯方法、広告方法のうちには自然法則を利用するものが考えられる。
 金融業、保険業は自然法則を利用するものは想像しにくい。
 医療業は、特許法上の産業に入らないとする。(後述(C)参照)

(B)利用とは
  ・「利用」は「実施」を意味する。
   (例)治療方法の発明(実施(使用)することが医療業上の利用に止まるもの)
医療業が産業でない ⇒ 特許の対象外(∵産業上の利用性を欠く)
   (例)治療機械や医薬の発明(医療上の利用)
    物の発明 ⇒ 特許の対象(∵生産することが産業(機械工業/製薬業)上の利用)
 
(C)医療業の産業性 -医療的発明は?-
 ・医療業は産業の一種か? ⇒ 伝統的に消極的(日本・諸外国)
    ∵人道上、人類のために広く開放すべきとの考え方。
 ・特許の対象としない理由 
  特許法上の発明としない or 産業上の利用性がない(医療業は産業でない)⇒後者が妥当
 ・医療業非産業説の根拠
    産業は、物(人間以外の事物)を対象とする業 → 医療業は区別できる
    医療業を特許法運用上、特許の対象とすべきであるとの社会的要請がない。
   ・特許庁の実務慣行の変遷 ≪医療業の範囲≫
    人体を構成要件とする発明であっても、治療・診断方法等の純医療的発明でないものは特許性を認めるべき場合がある。
    人から分離し又は排出した物は人体の一部を構成するものではない。
    → 血液・尿等を利用して診断に用いることができる方法の発明を特許する実務が定着。
    (ただし、診断方法の一歩手前の測定又は検査方法。∵診断方法の発明は医療業に属する。)

(D)産業上の利用性に関する問題
  (ⅰ)利用は、可能性があれば足りるか ⇒ 足りる
    ・企業化(産業的実施化)に相当の期間を要するから。
    ・特許制度の目的から、企業化するよう奨励し保護する必要があるから。
    ・出願又は特許当時に産業上利用されないことが明らかでもOK。
    ・産業上の利用性は、一般的に緩やかに解すべき。
  (ⅱ)経済性は必要か ⇒ 必要ではない
    ・産業上利用することができるとは、利益をあげられることではないから。
    ・発明の質(技術的価値)と経済性は関係がないから。
  (ⅲ)技術的不利益を伴うものはどうか ⇒ 伴うものでも利用性はある
    ・新しい効果を創造する場合には、何らかの不利益を伴うもの。
    ・伴わないものに限定すると多くの発明は特許性を否定されることになり、不当。
    ・改良又は他の技術的手段の付加によって除去することができる。
    ・ただし、以下の技術的不利益の場合を除く。
     到底除去できる可能性のない本質的なものである場合。
     利益をはるかに超えて、結局利用の可能性を実質上否定する程度のものの場合。
     (例)台風防止装置
  (ⅳ)技術的価値を有しないものはどうか ⇒ 利用性はない
    ・産業上利用する価値を有しないから。
    (例)従来のものを複雑化しただけのもの
       技術の進歩の過程から見て逆行した物(退歩的発明)
       従来のものに比べ技術的価値が著しく低いもの
    ※退歩的発明等に対する特許化の弊害
    ・「特許はつまらぬ発明に対して与えられる」との誤解を世間に与える原因となる。
    ・特許を得たものがいたずらに得意となって実施化に無用な努力を重ねる。など。

今日は以上でーす!

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