特許請求の範囲の記載要件②+図面+要約書
今日は前回の続き+図面と要約書について勉強しましょう!
目次
1.特許請求の範囲の記載要件
(ⅲ)特許請求の範囲の機能
(a)基本的機能
(b)特許請求の範囲記載上の留意事項
(ⅳ)明細書の記載要件に違反する場合の取扱い
2.図面
3.要約書
(ⅰ)趣旨
(ⅱ)要約書を巡る法的問題
1.特許請求の範囲の記載要件
(ⅲ)特許請求の範囲の機能
(a)基本的機能
特許請求の範囲には2つの基本的機能があった
(イ)保護範囲的機能:他人による特許権侵害となる区域(立ち入り禁止区域)の明示
(ロ)構成要件的機能:特許請求範囲に記載すべきものは発明の構成のみ,不可欠な事項
(b)特許請求の範囲記載上の留意事項
△特許請求範囲の記載に不備又は拙劣なところ:権利主張上重大な不利/無用な紛争
→その記載が適切であったとすれば過去の特許紛争の多くは防止し得たであろう
→□特許請求の範囲の作成こそ,特許出願人の最も注意を要する
①広く
△例えば特許請求範囲に必須要件でない事項(いわゆる付随的事項)を記載
→特許権侵害訴訟等において均等論が適用される場合を除き,特許請求の範囲に必須要件のみを記載した場合に比べ狭く解される(多記載狭範囲の原則 注1)
□記載や用語の一つひとつにつき,より広い概念の用語が無いか等を検討すべき。
△みだりに広くすることはかえって違法となるので留意すべき。次記②③参照。
注1)多記載狭範囲の原則
記載事項が多いほど各事項が独立して保護を受けることができて有利とする者(初心者)が少なくないが全く誤りである。
②発明でないものを含まないように
・特許請求の範囲内に,ⓐ効果を奏しない部分 注1),ⓑ実施例に裏付けられない発明(化学関係に多い)ⓒ従来技術(公知発明)等を,新規な発明と共に包含する場合
→△これらの瑕疵が例え一部であっても,これを包含する限り,その特許請求の範囲は瑕疵の部分についても特許を請求するものに帰す:そのままでは拒絶
注1)判決 東京高判昭54.11.28(セメント配合用添加剤事件)
③明りょうに
△特許請求範囲を広く記載するため,可能な限り機能的(作用効果的)に記載すると
特許請求範囲の記載が抽象的過ぎて不明瞭となるケースが少なくない
→△特許請求範囲の記載は不明瞭な方が有利であるとの風説 注1)は論外
△構成要件を機能的に記載する場合
→△詳細説明中に明瞭に発明の構成(実施例)の記載があっても構成要件は不明瞭
出願拒絶の理由及び特許無効の理由となるので注意:機能的クレーム
注1)不明瞭な記載についての風説
世間の一部で行われている「特許請求の範囲を何が何だか分からないように記載する方が有利である」との説は誤り。出願人が得をするような解釈は許されない。
④わかりやすく
□特許請求範囲は,明細書が権利書としての役割を果たすべき欄
→読む者が容易にその内容を理解し,誤解又は曲解しないように記載する必要がある
□「おいて」形式:出願発明と従来技術等との関係を分かりやすくできる
→いわゆるジェプソン形式 △外国出願において難点あり
⑤請求項をみだりに多く設けないこと
□下位概念的請求項の総和によって定まるものではない
→主請求項,上位概念的請求項が不当に広くなければこれにより権利範囲が確定する
(ⅳ)明細書の記載要件に違反する場合の取扱い
△この他の明細書の記載要件(§36-4,6)に違反する場合は,拒絶又は無効理由
2.図面
□図面は,発明の内容を理解し易くするため明細書の補助として使用
→設計図面のような詳細なものは不要
<strong>3.要約書</strong>
(ⅰ)趣旨:出願件数の増大→□公開公報による特許情報の提供を円滑化するため
(ⅱ)要約書を巡る法的問題
①要約書の不提出・不備等:方式違反:△補正をしないときは却下
②要約書と技術的範囲
特許法は,特許発明の技術的範囲を定める場合には,要約書の記載を考慮してはならない
③その他
・要約書のみに記載されている事項は,いわゆる拡大先願となり得ない(§29の2)
・特許請求範囲に補正として取り込むことができない(§17の2-3)
以上でーす!