企業知財部員のための特許法勉強ノート

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発明の特許要件 進歩性

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今日は進歩性を勉強しましょう!審査基準も要チェックです!

目次
1.発明の進歩性
(A)特許要件としての必要性-特許法の目的との関連-
(B)進歩性の規定の解釈
 (ⅰ)その発明の属する技術分野
 (ⅱ)通常の知識を有する者
  (a)通常の知識を有する者おける「通常の知識」
  (b)通常の知識を有する者における「者」
  (c)§36-4における「通常の知識を有する者」との関係
(C)進歩性判断の前提
(D)進歩性の判断基準
 (ⅰ)進歩性の判断の手法
  (a)進歩性の判断の基礎となる事項の認定
  (b)論理付け
  (c)進歩性
 (ⅱ)選択発明の進歩性の考え方
 (ⅲ)数値限定を伴った発明の進歩性の考え方
 (ⅳ)その他の留意事項

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 1.発明の進歩性
【条文趣旨】
通常の技術者が容易に発明をすることができたものに特許権を付与すると・・・
 →技術進歩に役立たないばかりでなく、かえってその妨げになる
  →そのような発明を特許付与の対象から排除しようというもの
●発明の保護と利用のバランス
●退歩的発明等に対する特許化の弊害

(A)特許要件としての必要性 -特許法の目的との関連-
 ●新規性 + 進歩性 = 発明が特許を受けることが出来る(§29-2)
 ●進歩性の程度 = 当業者(専門家)が容易に想到しない@出願当時の技術水準
注1)
・EPC §56-1「…技術水準からみて自明でないものの場合は進歩性を有する」
・PCT §33(3)「…先行技術からみて自明なものでない場合には,進歩性を有する…」
注2)技術水準:出願当時の最高・最新の技術水準 ≠ 平均レベル  

(B)進歩性の規定の解釈
 (ⅰ)技術分野:「発明の名称」だけでなく目的,構成及び効果の面から客観的に判断する
 (ⅱ)通常の知識を有する者
  ●当業者:専門家(正確かつ豊富な専門的知識を有する)
   ⇔ §36-4における「通常の知識を有する者」との関係
  (a)「通常の知識」= 高度の知識(当業者でない者から見た場合)
  (b)通常の知識を有する者における「者」 = 自然人(法人を含まない)
(C)進歩性判断の前提
 産業上使用可能性のある発明で新規性があることが前提

(D)進歩性の判断基準
 (ⅰ)進歩性の判断の手法
  (a)進歩性判断の基礎となる事項の認定
    ・新規性を有する「請求項に係る発明」の認定
・引用発明の認定
 → 発明の下位概念と引用発明との対比:両者の一致点・相違点を認定
       ●本願明細書中の引例技術:進歩性判断の基礎にできる
▲本願発明と類似するも動機付けを妨げる記載:引用発明として適格なし
        → 形式上/事実上の選択肢からなる請求項:いずれか一について引用発明と対比

  (b)論理づけ
・当業者が下位概念に容易に想到できたことの論理付けにより進歩性を判断
 ●次の観点で起因ないし契機(動機付け)となり得るものがあるかどうか
  ・請求項に係る発明に対する示唆
     ・課題の共通性
  ・機能/作用の共通性
  ・技術分野の関連性
     → 論理付けができた場合,請求項に係る発明の進歩性は否定される
     *複数引例を結び付けることを妨げる事情を主張・立証 → 進歩性を否定されない
     *以下の課題解決手段によるものは,容易想到性が推認され進歩性を否定
      ・最適材料の選択
  ・数値範囲の最適化
  ・均等物による置換
  ・技術の具体的適用に伴う設計変更など
     ●引用発明と比較した有利な効果を参酌する
  ・明細書の記載
  ・明細書の記載からの推論

<<製法限定等を含む請求項についての基本的な取扱い>>
・対象は次の通り
 ①ある生産物をその物の製造方法により特定しようとするもの
 ②作用,機能,性質又は特性により物を特定しようとする以下のもの
  ⅰ)「標準的」「慣用されている」「当業者に理解できる」ものに該当しない
  ⅱ)「標準的」「慣用されている」「当業者に理解できる」ものを複数組合せ →ⅰ)
・当該生産物と引用発明の厳密な対比を行わない
 → 両者は類似で進歩性に一応の合理的な疑い:進歩性欠如の拒絶理由通知
●審査官の心証を真偽不明となる程度に否定:拒絶理由が解消
▲審査官の心証が変わらない場合:拒絶査定(することが出来る)

<<一応の合理的な疑い:以下のことを発見したとき>>
●製造方法で特定しようとするもの
・引用発明と 「出発物質が類似」「製造工程が同一」
・引用発明と 「出発物質が同一」「製造工程が類似」
・出願後に「物の構造が判明」,それが出願前に公知発明から容易に発明可能
・本願実施形態 or 類似の物の進歩性を否定する引用発明

●作用,機能,性質,特性で特定しようとするもの
・他の定義又は試験・測定方法で換算可能
・出願後に「物の構造が判明」,それが出願前に公知
・本願実施形態 or 類似の物の進歩性を否定する引用発明

<<達成すべき結果によってのみ物を特定する請求項について>>
(例)「A以上の速度で飛行することができる飛行機」
(例)「光反射率をB%以下とした光ディスク」等

●以下の場合は当業者が容易に想到できたと考えない
・出願前に当業者に知られた物でない
・当業者が容易に発明できた物でもない場合
 又はその達成すべき結果が出願前に当業者に知られた技術的課題でなく,
 しかも当業者が容易に想到できた技術的課題でも無い場合

▲以下の場合は当業者が容易に想到できたと考える
・当該物(上記の「飛行機」「光ディスク」)が出願前に当業者に知られた物
・当業者が容易に発明できたもの

(ⅱ)選択発明の進歩性の考え方
(ⅲ)数値限定を伴った発明の進歩性の考え方
<<選択発明>>
以下のうち,前者の発明により新規性が否定されない/物の構造に基づく効果の予測が 困難な技術分野に属する発明のこと→ 引用文献に記載された事項又は記載されたに等しい事項より把握できない発明

●上位概念に包含されている下位概念で表現された発明
●選択肢(マーカッシュ形式など)の一部

<<選択発明の判断における引例適格>>
●刊行物中のマーカッシュ形式の選択肢の一部:その記載事項単独で把握できるか?
●刊行物記載事項,技術常識に基づきその物を作れ,その方法を使用できる記載か?
(例)刊行物の化学物質名又は化学構造式
・技術常識を参酌しても,当該化学物質を製造できるよう記載されていない
→ ▲当該化学物質は「引用発明」とはならない。
⇔ 当該刊行物が当該化学物質を選択肢の一部に含むマーカッシュ形式の
請求項を有する特許文献の場合,その請求項が§36-4の実施可能要件を満たさない事を意味しない 

<<選択発明の進歩性>>
・公知のもの(選択肢)から実験的に最適又は好適なものを選択すること
▲通常は進歩性は無いものと考える ∵通常の創作能力の発揮
●「選択肢の範囲内で刊行物に記載されていない有利な効果」は進歩性アリ

<<数値限定発明の進歩性>>
・実験的に数値範囲を最適化又は好適化すること
▲通常は進歩性は無いものと考える ∵通常の創作能力の発揮
●「数値限定範囲内で刊行物に記載されていない有利な効果」は進歩性アリ

<<有利な効果の顕著性>>
・数値範囲内のすべての部分で満たされる必要がある
・数値限定の臨界的意義について,次の点に留意する
●本願発明特定事項と引用発明の相違が数値限定有無のみ&課題が共通の場合
●課題が異なり,有利な効果が異質である場合

<<進歩性の判断>>
・請求項に係る発明は全体として考察されなければならない
▲以下の場合,発明全体として進歩性を有しない
 ・発明特定事項の各々が機能的又は作用的に関連していない
 ・発明が各事項の単なる組合せ(寄せ集め)
 ・各事項に進歩性がない

・引用形式請求項に係る発明
●引用される請求項に係る発明に進歩性があるとき,本願発明は進歩性を有する

・物自体の発明が進歩性を有するとき
●製造方法及びその物の用途発明は,原則として進歩性を有する

<<進歩性の審査>>
・商業的成功又はこれに純実事実
●請求項に係る発明の特徴に基づくものとの心証が得られた場合
→ 進歩性を肯定的に推認するのに役立つ事実として参酌可能
▲販売技術や宣伝等の原因との心証に至れば参酌されない

 

(ⅶ)その他の留意事項
<<事実認定>>
・本願明細書から得た知識を前提に事後的に分析すると容易想到できたように見える点

以上でーす!

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