企業知財部員のための特許法勉強ノート

知財関係で働いています。勉強している特許法についてまとめたノートを公開していきます。 一緒に特許法を勉強しましょう!

発明の特許要件 先願①

スポンサード リンク

今日は先願の勉強をしましょう!二回に分けます!
目次
1.先願者
(1)先願主義と先発明主義
    先発明主義と先願主義の利害損失
(2)先後願判断の時期的基準-日が基準 出願日の特例-
    出願日の基準
     出願日の繰上げ
     出願日の繰下げ
(3)同日出願の場合の取扱い-協議制-
    双方拒絶の妥当性
    協議命令
    協議成立の態様
    協議制度に関する問題
(4)先願等の対象とされない出願と対象とされる出願
   (A)対象とされない出願
   (B)対象とされる出願
     拒絶査定確定出願
     出願放棄
(5)同一出願人の先後願等の取扱い

スポンサードリンク
 

 1.先願者
(1)先願主義と先発明主義
 ●特許法の原則:独占権(特許権存続期間)と公有財産権(権利消滅後)
 ●「特許を付与できると認められる」同一発明につき,2以上の出願が別々にあった場合
 ⇒ ・1つのみに特許を付与すべき
   ・1つの発明に対し2以上の特許を付与することは特許制度の本旨にもとる
    =1発明1特許の原則又は重複特許(ダブルパテント)排除(禁止)の原則
      *特許出願と実用新案登録出願相互間にも適用
    
 ●いずれに特許を付与すべきか:2つの観点
  ⇒ ①発明の先後を基準とし,先に発明した者(先発明主義又は最先発明者特許主義)
  ⇒ ②発明の先後を問題とせず,先に出願した者(先願主義又は最先出願者特許主義)

●先発明主義と先願主義の利害損失●
 ・先発明主義

 ⇒ 最先の発明者を保護するもの。発明奨励上,先願主義に比べ優れているように見える
   △いち早い出願より秘蔵しようとする傾向を助長 
     △発明の先後決定のための手続(抵触審査手続)が極めて困難
・先願主義(日本他,世界の主流) ←全体として先発明主義に勝るといえよう
 ⇒ 公共の利益のために発明をいち早く公開しようとする者を保護するもの
 ⇒ ○特許制度の目的により適する主義 
   ○発明の先後決定に際して出願処理上便利=権利上の不安定を逃れることができる

(2)先後願判断の時期的基準-日が基準 出願日の特例
●出願の先後の判断:日が基準。日本の先願主義の特色の一つ
 ∵時刻の証明の煩雑さと同一発明の同日出願のケースが稀であることを考慮

●出願日の基準:郵送の場合は発信日。現実の出願日以外に特例がある
・出願日の繰上げ(現実の出願日より早い日を出願日と見なす):いわゆる出願日の遡及
   ①分割出願(§44)については,親出願の出願日
   ②変更出願(§46)については,もとの出願日
   ③国内優先権主張出願(§41)については,先の出願の出願日
   ④条約による優先権主張を伴う出願(§43)については,基礎出願の出願日(優先日)2)
   ・出願日の繰下げ(現実の出願日より遅い日を出願日と見なす場合)
    *平成5年法により,出願日の繰下げ規定は削除された。

(3)同日出願の場合の取扱い-協議制-
●協議制:協議命令を出し,2以上の特許出願人に協議させる
 ⇒ ○その結果定められた1の特許出願人のみが特許を受けることができる
   △協議が成立しない又は協議が不可能なとき,いずれも特許を受けることができない

●双方拒絶(や抽選制)の妥当性
⇒ 抽選制より合理的であろうが
  ○協議させれば納得のいく形で協議の成立を図る筈…共有は?(自主的共有性)
  △抽選にはずれた者はその発明を実施できない不利のため,大多数は好まないであろう

●協議命令
・各出願につき出願審査の請求がある時
・特許庁長官は相当期間を指定して協議をさせ,結果を届出させる(§39-7(現6))
  ⇒ △指定期間内に届出が無い:協議不成立と見なすことができる(§39-8(現7))。
    ⇒ 審査官(特許庁長官ではない)は,協議不成立の拒絶理由通知 4)。

 ●協議成立の態様
・協議が成立するとは,一方が出願取下げ又は放棄をすることに他ならない
   ⇒ 単に取下げ等するのではなく,他方の共願人 or共有特許権者となることが殆ど
・協議の結果,一方の取下げ等があった場合
 ⇒ その出願の出願人及び発明者の氏名等は特許公報に掲載

 ●協議制度の問題
①協議命令を受けないまま誤って一方が特許され,他方がまだ出願係属中の場合
・審査官の指示により,両者が事実上の協議
 ⇒ ○協議が調ったとき(出願係属中のものを取下げた)は問題が解消する
   △協議が調わないときは当該特許は無効とすべきものとなる
②協議命令が無いまま,双方が共に特許されている場合
・共に特許無効とするのは特許権者に過酷であり,不合理。両者が事実上の協議
⇒ ○一方の権利者がその権利を放棄した場合,無効理由の消滅と解すべき
③一方が特許され,他方の拒絶査定が確定した場合(要は,問題かどうか)
・拒絶確定出願の出願人にとって,他の競願の特許化を阻止できる特許法上の利益(地位)が与えられたと同じこと ⇒ 差し支えない

(4)先願等の対象とされない出願と対象とされる出願
 (A)対象とされない出願
・出願後に放棄され,取下げられ若しくは却下された出願
・拒絶査定が確定した出願

 (B)対象とされる出願
・従来法では,拒絶査定が確定した出願又は放棄された出願も対象であった
 ⇒ 平成10年法で対象とされない出願となった。

(5)同一出願人の先後願等の取扱い
●重複特許禁止の原則は,同一出願人に対しても当然適用されるべき
・同一発明につき同一人が重ねて出願することは一般に考え難いが,実際問題として少なくない。⇒ 出願人は,出願毎に発明が異なっているとして出願をするのであろうが,
  その見解が客観的に正しいとは限らないからである。
・最初と後の出願人は異なる者であるとし,最初の出願の発明が特許を受けられる
  ⇒ ・特許権の存続期間に関する規定の趣旨に反する
    ・同一人の同日出願の場合も,特許を受けられる発明はそのうちの一つに限るべき
⇒ 選択のみを行えば足りる選択特許措置(選択しなかった他方の出願につき,§39-2又は4により拒絶査定を行う

以上でーす!

スポンサード リンク