企業知財部員のための特許法勉強ノート

知財関係で働いています。勉強している特許法についてまとめたノートを公開していきます。 一緒に特許法を勉強しましょう!

発明の特許要件 拡大された範囲の先願②

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今日も拡大先願をちょっとだけやります!

目次
1.拡大された範囲の先願
(ⅳ)29条の2についての留意事項
 (a)出願日が遡及する出願との関係
 (b)出願後の補正との関係
 (c)39条との関係
 (d)先願の明細書に記載された発明

(ⅴ)29条の2に関する問題
 (a)特許出願の日の意味-優先日か現実の出願日か-
 (b)出願人同一の意義 

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 1.拡大された範囲の先願
(ⅳ)29条の2についての留意事項
 (a)出願日が遡及する出願との関係
出願の分割、変更をするときは出願日が遡及するが、29条の2の適用については遡及が認められない。
(∵分割等による新出願をするにあたり、もとの出願の最初の明細書又は図面に記載されていない技術的事項を発明の詳細な説明又は図面に入れてくることがあるが、これに出願遡及の効果を与えることは不当)
 (b)出願後の補正との関係
出願後になされた補正により新たに加えられた技術的事項は、29条の2の適用はないが、当初明細書に記載されていてその後公開前に削除された事項はどうか?
   ⇒ 削除された事項も、当初明細書に記載されたものとして公報等を通じ公開される以上、上記の先願事項となると解すべき。

 (c)39条との関係
   29条の2と39条との相違点
①同日出願と異日出願
29条の2:出願の日前の出願が対象。(同日出願は適用なし。)
39条:同日出願についても適用あり。
②出願公開等の有無
29条の2:先願の出願公開等がなされていない場合には適用がない。
39条:先願の出願公開等がなされていない場合についても適用あり。
③取り下げ・却下
29条の2:先願の出願公開等がなされた以上は、その後取り下げ・却下となっても先願の地位に変わりがない。
39条:出願ははじめからなかったものとみなされ、先願としての地位を失う。
④発明者同一
29条の2:先願の発明者と後願の発明者が同一である場合は、適用なし。
39条:後願を排除できる。
⑤冒認出願の先願性
ともに、正当権利者に対し先願とはなりえない点で相違なし。
29条の2:第三者の出願に対する関係において、冒認出願は先願となりえる。
39条:第三者の出願に対する関係においても、先願となりえない。
⑥出願人同一
29条の2:後願の出願時において出願人同一の場合には適用なし。
39条:適用あり。
 (d)先願の明細書に記載された発明
  同一表現でなくても、同一の技術的思想と認められる場合を含む。当業者の技術常識をもってすれば実質的同一と認められる発明は先願に記載されたもの。
  (∴単なる示唆、未完成発明、進歩性がないものは先願明細書に記載された発明ということはできない。単に公知文献が少数あるというだけのものも。)

(ⅴ)29条の2に関する問題
 (a)特許出願の日の意味-優先日か現実の出願日か-
  優先権が認められる出願について、29条の2の「特許出願の日」は現実の特許出願の日をいうか、第1国の出願の日(優先日)をいうか。
    ⇒ 第1国説が妥当であると解する。
   <第2国説>
   <第1国説>
 (b)出願人同一の意義
    後願は29条の2の適用を受けないのであるが、悪用されて弊害が生ずると指摘。
   弊害:特許権の実質上の存続期間の延長。

今日はちょっと短いですが以上でーす!

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