企業知財部員のための特許法勉強ノート

知財関係で働いています。勉強している特許法についてまとめたノートを公開していきます。 一緒に特許法を勉強しましょう!

従業者発明について特許を受けることができる者2+外国人

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次回の続き+外国人について勉強しましょう!

目次
1 従業者発明について特許を受けることができる者
(4)職務発明についての権利の帰属-使用者か従業者か-
 (A)使用者等の役割と従業者等の役割
 (B)両者の利害の調整
 (C)使用者等の受ける権利-k実施権 予約承継による特許権の取得
 (D)従業者等の受ける権利
  (ⅰ)対価
  (ⅱ)対価の種類-職務発明規定上の対価を中心として-
(5)業務発明の取扱い-予約承継の無効 慣行的措置-
 (A)予約承継の無効
 (B)慣行的措置-届出義務 優先協議義務-
2 外国人
(1)日本国内に住所又は居所(法人にあっては営業所)を有する場合
(2)(1)に該当しない場合であっても
 ①日本国民を特許法上区別しない国(平等主義を採る国)の国民であるいとき(§25-1)
 ②特許法上日本に対し相互主義を採る国の国民であるとき(§25-2)
 ③条約に別段の定めがあるとき(§25-3)

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 1 従業者発明について特許を受けることができる者
(4)職務発明についての権利の帰属-使用者か従業者か-
 (A)使用者等の役割と従業者等の役割
・従業者等:企業で多くの知識・技能を体得し,発明完成を果たす
・使用者等:発明者に「職務発明をするに至った行為」を職務として与え,その職務の遂行に必要な設備・資材・費用(給与も含む)を提供そ,発明の完成に多大の貢献
⇒ 職務発明に対して使用者等の果たす役割は極めて大きい
 
 (B)両者の利害の調整
・原則として特許を受ける権利は従業者等にあるとすることが従業者を保護する上で妥当
・従業者等の権利確保+これによって生ずる使用者等の不利益を考慮し補償的権利を付与

 (C)使用者等の受ける権利-実施権 予約承継による特許権の取得
職務発明について,従業者又は特許を受ける権利を承継した者が特許を受けた時,使用者等はその特許発明を当然に実施できる権利(法定通常実施権)を有する(§35-1)

②使用者等は,予め,従業者のした職務発明につき特許を受ける権利若しくは特許権を使用者等に譲渡させ,又は専用実施権を使用者のために設定する旨を定めた契約,勤務規則等により,以上の権利を有効に承継することができる。いわゆる予約承継
職務発明以外の従業者発明につき,このような承継を契約等により予約することは無効
●契約等で予約の意味を明確にし,権利移転の対抗要件を備える為(§34-1,§34-4参照),出願手続の便宜 注1)のため及び将来の紛争を未然に防止するため,発明完成後遅滞なく譲渡証書を作成し,保存することが必要である。
   注1)譲渡証書と出願手続 譲渡証書は出願時に添付する必要はないが,命令があった場合は提出しなければならない

 (D)従業者等の受ける権利
  (ⅰ)対価
職務発明をした従業者等は,その発明につき特許を受ける権利を有し,特許権者となることができるが,予約等により使用者等に特許を受ける権利若しくは特許権を承継させたとき又は使用者等のため専用実施権を設定したときは,相当の対価を受ける権利を有す(§35-3)

  (ⅱ)対価の種類-職務発明規定上の対価を中心として-
   ・発明時(承継時)対価
特許を受けることが出来ると期待される発明につき,特許を受ける権利があるとして,承継時に評価し支払われるもの。出願すると否とに係わらず,また,出願しても特許になるか不明の時に支払うもの:一定かつ小額である

   ・出願時対価
対価の性質等は発明時対価にほぼ同じ。特許を受けられない場合でも後願の排除,出願公開されれば拡大先願地位の取得等の効果があり,その点を加味した評価を受けられる
   ・審査請求時対価
審査請求時にホ床し,支払うものであるが,上記2者に比べて例は極めて少ない
   ・登録時対価
特段の事情が無い限り,これこそ特許を受ける権利に対する正確な意味の§35の「対価」(出願したが特許を受けることが出来なかったとき又は特許が無効になったときは,それまでに支払った対価は結局報奨金的なものであったことに帰する)。上記より高額
   ・実績(実施)時対価
上述の諸対価の金額が通常一定であるのに対し,その発明に前記積極的利益が生じた場合にその利益に応じて支払われるもの(分割式)。最も実質的なもの
   ・実績時単価算定方法:評価点数法とスライド法 注2)

    注2)スライド法
    ・利益額,売上額又は実施料収入等を基準として,一定の算出方法によって支払額を決定
    ・具体例の一つ(国家公務員の場合例 *)
     ただし表の補償金が発明者1人につき通算して200万円を超えないものとする **
     * 「国家公務員の職務発明等に対する補償金支払要領」(職務発明と補償金p238)
     ** 補償金について上限を設けることは,§35-4の趣旨に反し違法のきらいがある

(5)業務発明の取扱い-予約承継の無効 慣行的措置-
 (A)予約承継の無効
職務発明でない場合は,予め使用者等に特許を受ける権利若しくは特許権を承継させること,又は使用者等のため専用実施権を設定することを定めた契約等は無効(§35-2)。

 (B)慣行的措置-届出義務 優先協議義務-
・主要な企業等は,従業者等のした発明で業務範囲に属するものはすべて使用者等に届出をしなければならない(届出義務)こととし,届出のあった発明は,職務発明かどうかを判断し,従業者等はその発明を他に優先して使用者等と協議すべきである(優先協議義務)とする
・協議の結果,業務発明を使用者等が承継する場合,従業者等に適当な対価を支払う

2 外国人
・外国人であるからといって,特許権その他特許に関する権利の享有を認めないのは妥当でない
・一方,全ての外国人に無条件で日本国民と全く同様の待遇をする必要は必ずしもない
⇒ 国際的視野に立った産業政策上及び国際的平等の見地から,外国人には一定の条件下で権利の享有を認めることが適当(§25)。外国人で権利の享有が認められる場合は次の通り

 (1)日本国内に住所又は居所(法人にあっては営業所)を有する場合
 (2)(1)に該当しない場合であっても,
  ①日本国民を特許法上区別しない国(平等主義を採る国)の国民であるいとき(§25-1)
  ②特許法上日本に対し相互主義を採る国の国民であるとき(§25-2)
  ③条約に別段の定めがあるとき(§25-3)

以上でーす!

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